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違和感 VS いよかん
Posted on 12月 8th, 2006 はおりん No comments突然こんな小説を思いついた。
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違和感 VS いよかん
その日、オレは朝から妙な違和感を感じていた。
いつもどおり7時に起き、いつもどおりとろけるチーズをのせたトーストとスクランブルエッグとヨーグルトと1瓶の牛乳の朝食をとり、いつもどおり新聞を持って駅に向かった。
駅に向かう途中、いつもどおり花屋に寄って小さな花束を買い、いつもどおりコーヒーショップによって冴子さんにプレゼントし、いつもどおりカプチーノを飲みながら新聞を読む。
いつもどおり店を出て、いつもどおり駅に向かい、いつもどおり8時12分の通勤快速に・・・乗れなかった。駅のホームはいつもどおり混雑していた。いつもどおりの位置に立ち、毎朝顔を合わせる女性に挨拶をし、一緒に列に並んだ。駅のホームは混雑していて、新聞を読む余裕は無い。いつもどおり2分も待てば通勤快速が、来るには来たが、その直前、例の女性が知らないオッサンの手をつかんで弱々しく「痴漢です」などと言うのを放っておくことは出来ないだろう。
オッサンを駅員に引き渡した後、時刻は8時26分。乗り継ぎ駅に着くのは8時55分頃だが、その頃には電車の本数はずっと減っていて乗継が悪く、 1時間近く遅刻するのは間違いない。仕事に行く気にもなれないので、例の女性、頼子さんも口車に乗せて、二人で有給を取ってしまうことにした。
いつもとは違う日、いつもどおりでない行き先。だが違和感の原因はこんなことではないとわかっていた。
夕方も早い時間に頼子さんと別れたオレは、毎朝立ち寄る喫茶店に行くことにした。もちろん冴子さんにお会いするためだ。帰社する頃にはいなくても、この時間ならまだいるかと思ったのだが、偶然にも仕事を終えた彼女が店から出てきたところだった。なじみの客である利点を生かし、ちょっと挨拶がてらお茶にでも誘おうかと思って声をかけたら・・・拉致られた。冴子さんに拉致されたオレはデパートの婦人服売り場で品評会をさせられ、紳士服売り場で着せ替え人形にされたあと、食事をおごらされていた。思った以上にパワフルな女性だが、強気な美人はオレの好みだ。もちろん、違和感の原因は彼女でもない。ワインを軽く飲んで、マンションの近くまで送っていき、休日に再びデートの約束をして、オレは帰途に着いた。
いつもどおりじゃなかったが、思いがけず高収入の一日だった。しかし、最後の最後で雨に降られてしまった。傘を持っていなかったので家に着く頃にはかなり濡れてしまっていた。スーツの水分をタオルで軽く吸い取り、ハンガーにかけておいた。
次の日、再びいつもどおりの朝食をとりながらニュースを聞いていたオレの耳に入ってきた言葉は、いつもどおりのものではなかった。
「昨日は全国的にいよかんが降りました。糖度が高く、甘いいよかんだったため、路面が大変すべりやすくなっており・・・」昨日のオレの勘は、「違和感」ではなく、「いよかん」だったらしい。くそっ、こんなことなら傘を持って出るんだった。いつものスーツが着れないじゃないか。
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うーん、くだらん。
腐男子, 過去日記コメントを書く